不平等は避けられないものではない

Inequality Is Not Inevitable

June 27, 2014, The New York Times

Thomas Pikettyによって最近出された重要な本、『21世紀資本』によれば、「暴力的なほどの、富と所得の二極化は、資本主義が本来的に持っている性質である。第2次世界大戦後の数十年の間に観察されたような、不平等の減少は、逸脱的な状況だったとみるべきである。」という。

ただし、これは、Pikettyの仕事を表面的にしか理解していない。この本は、不平等が徐々に深化したことを理解するための、制度的文脈についても論じている。残念なことに、彼のこの部分の分析は、あまり注目されていないのだが。

New York Timesのシリーズである、"The Great Divide"のなかでは、「資本主義には根本的な法則がある」という考えが正しくないことを証明する、数々の例が出されている。

少なくとも理論的には、「完全競争が進めば利益はゼロになっていく」と考えられているが、高い利益を維持するために、独占や寡占が至るところでなされている。CEOの生産性が労働者に比べて格段に増加した、ということの確たる証拠がないのに、CEOの所得は増加し、今や典型的な労働者の295倍である。

これが資本主義の冷酷な法則でなければ、何なのであろうか?その率直な答えは、政策と政治である。

なぜ、アメリカは、北欧諸国とは違って、不平等を高める政策を選んだのだろうか。答えの一部は、以下のようなものである。第2次世界大戦が記憶の彼方に消えて行くにつれて、それが生み出した連帯もまた、記憶の彼方に消えていった。また、アメリカが冷戦に勝利したので、我々の経済モデルに対する能力のある競争者がいないように思えたことである。

さらに、イデオロギーと利害が、極悪なかたちで結びついた。ソビエトシステムの崩壊から誤った教訓を引き出した者もいた。企業の利益代表者は、規制を除去するように主張した。たとえ、それらの規制が、私たちの安全、健康、経済そのものを保護し、改善しうるものであっても、である。

アメリカの政治的システムは、貨幣によって荒廃させられている。経済的不平等は、政治的不平等となって現れ、政治的不平等は、経済的不平等の増加を加速させる。企業の豊かさは、私たちが貧しい人びとへの福祉をカットするにつれて増加している。議員は豊かな農業主への補助金を主張するのに、私たちは、必要とする人びとへの食事のサポートをカットしている。私たちはMedicaidを制限するのに、薬品会社は数千億ドルを受け取っている。

私たちの経済、デモクラシー、そして社会は、これらの大きな不平等の犠牲を払っている。経済の真価は、王様たちがタックスヘイブンにどれだけの富を蓄積できたかではなく、普通の市民がどのくらい豊かに生きていられるか、によって測られるべきだ。
私たちが、アメリカの自己イメージが"the great middle-class society"であるとどれだけ主張しようとも、所得の中央値は、25年前と比べてより低くなっている。不平等は確実に増加しているのだ。アメリカは、ヘルスケア、寿命、そして健康状況へのアクセスに対する大きな分断を持つ国となってしまっているのである。

最高裁がAffordable Care Actを反故にしなかったことに対して、多くの人が安堵するなかで、そのMedicaidへの決定へのインプリケーションは、正しく認識されていない。オバマケアの目的である、多くのアメリカ人にヘルスケアへのアクセスを保障するというものは、行き詰まったままである。24の州は、Medicaidプログラムの拡張を実行に移していない。

私たちは、問題の本質を突き止めている。政治的不平等と政策は、我々のデモクラシーを商品化し、崩壊させている。より公平なアメリカとするために闘うことができるのは、当事者である市民だけだ。世界における私たちの立場を元に戻し、国民とはいかなる存在かということに関する感覚を取り戻すには、遅すぎることはない。広がり、深化し続ける不平等は、何か不変の経済的な法則によってもたらされるのではなく、私たち自身が描く法則によってもたらされるのである。