リフキン『大失業時代』(1995=1996)

わたしたちはいま、世界史の新しい局面―世界の人口をまかなうための商品やサービスの生産に必要とされる労働者がますます減り続けていく時代―に足を踏み入れつつある。
この新しいハイテク革命は労働時間を短縮させ、幾百万の人々に大きな恩恵を与えるかもしれない。近代史上はじめて、多くの人間が伝統的な市場での長時間労働から解き放たれ、余暇活動を追求する自由を手に入れる可能性が生まれたのだ。だが、その同じテクノロジーの力は、失業の増加と世界規模の不況をいともたやすく招きかねない。
わたしたちを待ち受けている未来がバラ色に輝くか灰色にくすむかは、情報化時代における生産性の向上で生みだされた利益がどのように分配されるかに大きく左右される。
利益が公正平等に分配されるには、全世界で労働時間を短縮し、もはや市場ではその労働を必要とされない人々に対して民間部門でも公共部門でもない第三の部門―社会経済(social economy)―による代替雇用を促進するよう各国政府が一致協力して取り組む姿勢が欠かせない。
だが逆に、ハイテク革命による生産性向上でもたらされた富が、もっぱら企業の儲けをふやすために、あるいは株主、企業のトップ、そして新たに生まれつつあるハイテク知識労働者というエリート層の利益のためにもっぱらもちいられるならば、持つ者と持たざる者との溝はますます広がり、ひいては全世界的な規模の社会的、経済的混乱を引き起こしかねない。